【復刻SS】雲雀ヶ丘由貴
- 2016/11/21
- 00:18
週末なので今日もぶらばん!のSSです~
これもしかすると同人誌に掲載してなかったかも。
データだけありました。
なので特にタイトルもついてません^^:
それではどうぞ~
「はぁ・・・」
雲雀ヶ丘由貴は盛大にため息をついた。
今日は8月の最終日8月31日。
当然翌日は新学期である。
そんな日に由貴は同じブラスバンド部の副部長で、
彼氏でもある香住純に呼び出されていた。
今日は明日から新学期という事もあり、
部活も休みにし、
翌日に備えて英気を養おうと考えていた矢先である。
純から電話がかかってきたのだ。
最近は練習やお互いの都合もあり、
なかなか2人きりでデートをする事ができていなかったので、
由貴は当然そういった誘いだと期待したのだが、
内容は全く別のものだった。
「もしもし。あなたから電話をかけてきて下さるなんて
珍しいですわね。どうなさいました?」
「由貴・・・頼む、助けてくれ・・・」
受話器から聞こえてくる声は深刻な雰囲気だ。
「ど、どうしたのですの!?」
「俺は・・・もう明日を迎えられない・・・」
「それはどういう・・・」
「頼む・・・家に来てくれ・・・」
そのようなやりとりをしたのが数分前。
恋人の危機を感じた由貴は薙刀を持ち、
自家用の高級車に乗り込み、
急いで純の家に向かった。
「今参りましたわ!」
バタン!
由貴は勢いよく恋人の家のドアを空けた。
そうすると・・・
「おお!由貴来てくれたのか!」
恋人の声が聞こえる。
どうやら無事のようだ。
「何がありましたの!?敵は!?」
由貴は身構える。
そこへ純が2階の階段から降りてくる。
しかし、由貴が持っている物を見て、
動きが止まる。
「お、おいなんだ、その物騒な物は・・・」
「何って、薙刀ですけど。
私もたしなみ程度にしかやっておりませんが、何もないよりはいいと思いまして。それよりも敵はどこです!?」
「敵?何言ってるんだ由貴?」
どうも会話が噛み合わない。
由貴はそう感じたので、自分が思っていることを告げてみた。
「だって、貴方が切羽つまったような事をおっしゃいますから、
強盗にでも襲われているのかと思いまして・・・」
「・・・」
「・・・」
2人の間に沈黙が下りる。
「・・・ごめん、勘違いさせちゃったか・・・」
「・・・そのようですわね・・・」
「とりあえずあがってよ」
「ええ・・・」
由貴は自分が勘違いしてしまったのが恥ずかしかったのか、
頬を赤くしながら純の家に入った。
「それで本当は私に何のご用でしたの?
まさか宿題が終わってないなんていう、
ご冗談をおっしゃるわけではないですわよね?」
由貴は純の部屋に通されるなり質問した。
実際電話では後がないような内容だったのだ。
何もない、という事はないだろう。
「あはははは」
純が笑う。
それに合わせて由貴も笑う。
「うふふふふ」
「・・・」
「・・・」
そして再度訪れる沈黙。
しかし、今度の沈黙はすぐに解かれた。
「頼む!宿題手伝ってくれ!」
「・・・今、何と・・・?」
「宿題が終わってないんだ・・・」
「・・・はい?」
「ここ最近練習やら合宿やらでできてなかったんだ・・・」
「・・・・・」
どうやらさっきの笑いは余裕から来る笑いではなく、
完全に図星をつかれて出た笑いだったようだ。
こうしたやりとりがあり、
由貴は両手を合わせて顔の前に出した彼氏に対して、
ため息をつくことになったのだった。
由貴は結局手助けをする事にした。
ただしもちろん直接答えを教えるという事はしなかった。
それが本人のためにならない事をよく理解していたからである。
勉強だろうとブラスバンドだろうと、
この世の殆どの事象は積み重ねが大事なのだ。
基本的には自分で解かせ、どうしてもわからないところのみ、
ヒントを出したり、どの公式を使うか等の考え方を教えた。
純も頭が悪いわけではないので、
考え方を教えれば思い出したり、
それを応用して問題を解けるようになった。
よって宿題はスムーズに進んでいった。
又、全てやっていなかったわけでもなかったので、
最終的にはなんとか片付いた。
「終わった~~~~!」
時刻は夜の9時。
純が歓喜の声をあげる。
「由貴、本当助かったよ。教え方上手いなぁ。
先生の素質あるんじゃないか?」
「それほどでもありませんわ」
口ではそのように言っているが、
恋人に褒められてかなり嬉しいようだ。
「それに、あなたもがんばりましたし・・・」
「ごめんな、貴重な夏休みの最終日をこんな事に付き合わせちまって」
純が謝ってくる。
「この埋め合わせは必ずする。それから・・・由貴の彼氏であるという事に対して自覚を持って、今後はこんな事にならないよう気を引き締めなおして2
学期に望むよ」
「そうですわね。このような事は二度とごめんですわ」
「コンクールももう少しだしね。部活もより一層がんばらなきゃな」
「良い心がけですわね。部活もそろそろ最終調整の時期ですわ。
貴方の副部長としての働きに期待しています。それでは私はそろそろ・・・」
由貴が立ち上がる。
「ああ」
純も立ち上がって、
玄関に案内する。
「あ、そっか、当然車は帰ってるよな」
玄関を開けて今更純はそのことを確認する。
「送るよ」
純は由貴を送ることにした。
「由貴・・・、ありがとうな・・・」
純が歩きながらお礼を言ってくる。
「もういいですって」
由貴が苦笑する。
だが純が言いたい事は今日のことではないようだ。
「違う、みんなの事」
純たち元赤城山ブラスバンド部は5月に行われた学内コンクールにて、
由貴率いる円山ブラスバンド部に敗北している。
この学内コンクールに負けた方が廃部になるという過酷な勝負だった。
そしてその勝負に負けたという事は廃部になる、はずだったのだ。
しかし、由貴の提案により、元赤城山ブラスバンド部のメンバーは、
円山ブラスバンド部に入部させてもらえることになったのだ。
「あの時・・・少なくとも俺は絶望を感じていた。俺から音楽を取ったら何も残らないからな。正直今後どうすればいいかわからなかったよ。でも由貴のあの提案のお陰で、また好きなブラスバンドを続けられる事になった」
いつになく真面目に言う純に対して由貴も話を真剣に聞いている。
「本当、みんなと、そして俺を迎え入れてくれてありがとう」
「それこそお礼を言われるような事ではありませんわ。
私はあなた方の演奏を聞き、本当にあなた方と共に音楽活動をしてみたい、
そう思いましたので、部活に勧誘したまで。それ以上でも
それ以下でもありませんわ」
由貴がきっぱりと答える。
「それに・・・あの時あなた方に勝てたのは・・・
貴方のお陰でもあるんですし・・・」
由貴が小声でつぶやく。
純は聞き取れなかったので聞いてみた。
「え?何?」
「な、なんでもありませんわっそれよりも前回のコンクールは
銀賞でしたので、今回こそ金賞を取りますわよ!」
部長であり、恋人である由貴の決意を聞き純も気合いを入れる。
「ああ!」
「これからもよろしくお願いしますね」
由貴が手を出してくる。
それは気持ち的に負い目を感じている彼に対して、
対等に部活上の立場としても、恋人としても付き合いたい、
という意思をこめた握手。
純はその手を取り、今後とも共にいる事を誓ったのだった。
これもしかすると同人誌に掲載してなかったかも。
データだけありました。
なので特にタイトルもついてません^^:
それではどうぞ~
「はぁ・・・」
雲雀ヶ丘由貴は盛大にため息をついた。
今日は8月の最終日8月31日。
当然翌日は新学期である。
そんな日に由貴は同じブラスバンド部の副部長で、
彼氏でもある香住純に呼び出されていた。
今日は明日から新学期という事もあり、
部活も休みにし、
翌日に備えて英気を養おうと考えていた矢先である。
純から電話がかかってきたのだ。
最近は練習やお互いの都合もあり、
なかなか2人きりでデートをする事ができていなかったので、
由貴は当然そういった誘いだと期待したのだが、
内容は全く別のものだった。
「もしもし。あなたから電話をかけてきて下さるなんて
珍しいですわね。どうなさいました?」
「由貴・・・頼む、助けてくれ・・・」
受話器から聞こえてくる声は深刻な雰囲気だ。
「ど、どうしたのですの!?」
「俺は・・・もう明日を迎えられない・・・」
「それはどういう・・・」
「頼む・・・家に来てくれ・・・」
そのようなやりとりをしたのが数分前。
恋人の危機を感じた由貴は薙刀を持ち、
自家用の高級車に乗り込み、
急いで純の家に向かった。
「今参りましたわ!」
バタン!
由貴は勢いよく恋人の家のドアを空けた。
そうすると・・・
「おお!由貴来てくれたのか!」
恋人の声が聞こえる。
どうやら無事のようだ。
「何がありましたの!?敵は!?」
由貴は身構える。
そこへ純が2階の階段から降りてくる。
しかし、由貴が持っている物を見て、
動きが止まる。
「お、おいなんだ、その物騒な物は・・・」
「何って、薙刀ですけど。
私もたしなみ程度にしかやっておりませんが、何もないよりはいいと思いまして。それよりも敵はどこです!?」
「敵?何言ってるんだ由貴?」
どうも会話が噛み合わない。
由貴はそう感じたので、自分が思っていることを告げてみた。
「だって、貴方が切羽つまったような事をおっしゃいますから、
強盗にでも襲われているのかと思いまして・・・」
「・・・」
「・・・」
2人の間に沈黙が下りる。
「・・・ごめん、勘違いさせちゃったか・・・」
「・・・そのようですわね・・・」
「とりあえずあがってよ」
「ええ・・・」
由貴は自分が勘違いしてしまったのが恥ずかしかったのか、
頬を赤くしながら純の家に入った。
「それで本当は私に何のご用でしたの?
まさか宿題が終わってないなんていう、
ご冗談をおっしゃるわけではないですわよね?」
由貴は純の部屋に通されるなり質問した。
実際電話では後がないような内容だったのだ。
何もない、という事はないだろう。
「あはははは」
純が笑う。
それに合わせて由貴も笑う。
「うふふふふ」
「・・・」
「・・・」
そして再度訪れる沈黙。
しかし、今度の沈黙はすぐに解かれた。
「頼む!宿題手伝ってくれ!」
「・・・今、何と・・・?」
「宿題が終わってないんだ・・・」
「・・・はい?」
「ここ最近練習やら合宿やらでできてなかったんだ・・・」
「・・・・・」
どうやらさっきの笑いは余裕から来る笑いではなく、
完全に図星をつかれて出た笑いだったようだ。
こうしたやりとりがあり、
由貴は両手を合わせて顔の前に出した彼氏に対して、
ため息をつくことになったのだった。
由貴は結局手助けをする事にした。
ただしもちろん直接答えを教えるという事はしなかった。
それが本人のためにならない事をよく理解していたからである。
勉強だろうとブラスバンドだろうと、
この世の殆どの事象は積み重ねが大事なのだ。
基本的には自分で解かせ、どうしてもわからないところのみ、
ヒントを出したり、どの公式を使うか等の考え方を教えた。
純も頭が悪いわけではないので、
考え方を教えれば思い出したり、
それを応用して問題を解けるようになった。
よって宿題はスムーズに進んでいった。
又、全てやっていなかったわけでもなかったので、
最終的にはなんとか片付いた。
「終わった~~~~!」
時刻は夜の9時。
純が歓喜の声をあげる。
「由貴、本当助かったよ。教え方上手いなぁ。
先生の素質あるんじゃないか?」
「それほどでもありませんわ」
口ではそのように言っているが、
恋人に褒められてかなり嬉しいようだ。
「それに、あなたもがんばりましたし・・・」
「ごめんな、貴重な夏休みの最終日をこんな事に付き合わせちまって」
純が謝ってくる。
「この埋め合わせは必ずする。それから・・・由貴の彼氏であるという事に対して自覚を持って、今後はこんな事にならないよう気を引き締めなおして2
学期に望むよ」
「そうですわね。このような事は二度とごめんですわ」
「コンクールももう少しだしね。部活もより一層がんばらなきゃな」
「良い心がけですわね。部活もそろそろ最終調整の時期ですわ。
貴方の副部長としての働きに期待しています。それでは私はそろそろ・・・」
由貴が立ち上がる。
「ああ」
純も立ち上がって、
玄関に案内する。
「あ、そっか、当然車は帰ってるよな」
玄関を開けて今更純はそのことを確認する。
「送るよ」
純は由貴を送ることにした。
「由貴・・・、ありがとうな・・・」
純が歩きながらお礼を言ってくる。
「もういいですって」
由貴が苦笑する。
だが純が言いたい事は今日のことではないようだ。
「違う、みんなの事」
純たち元赤城山ブラスバンド部は5月に行われた学内コンクールにて、
由貴率いる円山ブラスバンド部に敗北している。
この学内コンクールに負けた方が廃部になるという過酷な勝負だった。
そしてその勝負に負けたという事は廃部になる、はずだったのだ。
しかし、由貴の提案により、元赤城山ブラスバンド部のメンバーは、
円山ブラスバンド部に入部させてもらえることになったのだ。
「あの時・・・少なくとも俺は絶望を感じていた。俺から音楽を取ったら何も残らないからな。正直今後どうすればいいかわからなかったよ。でも由貴のあの提案のお陰で、また好きなブラスバンドを続けられる事になった」
いつになく真面目に言う純に対して由貴も話を真剣に聞いている。
「本当、みんなと、そして俺を迎え入れてくれてありがとう」
「それこそお礼を言われるような事ではありませんわ。
私はあなた方の演奏を聞き、本当にあなた方と共に音楽活動をしてみたい、
そう思いましたので、部活に勧誘したまで。それ以上でも
それ以下でもありませんわ」
由貴がきっぱりと答える。
「それに・・・あの時あなた方に勝てたのは・・・
貴方のお陰でもあるんですし・・・」
由貴が小声でつぶやく。
純は聞き取れなかったので聞いてみた。
「え?何?」
「な、なんでもありませんわっそれよりも前回のコンクールは
銀賞でしたので、今回こそ金賞を取りますわよ!」
部長であり、恋人である由貴の決意を聞き純も気合いを入れる。
「ああ!」
「これからもよろしくお願いしますね」
由貴が手を出してくる。
それは気持ち的に負い目を感じている彼に対して、
対等に部活上の立場としても、恋人としても付き合いたい、
という意思をこめた握手。
純はその手を取り、今後とも共にいる事を誓ったのだった。