【復刻SS】竜胆ルリの昔話
- 2017/01/22
- 23:59
週末なのでSSです~
今回からは天神乱漫のSSを公開していきます~
初回の今回は竜胆ルリの過去のお話です。
では本編をどうぞ
(ルリは許されない・・・許されてはいけない・・・)
(カズ・・・ごめんなさい・・・)
・・・
・・・
・・・
(不覚だった・・・こんな罠にひっかかるなんて・・・)
竜胆ルリはねずみとりにひっかかかってしまっていた。
通常こんな罠にかかるルリではない。
しかし、子狐が罠にかかりそうになっていたのを助けたのだ。
あまりに余裕がなかったため身代わりにならざるを得なかったのだ。
助けた子狐は仲間を呼びに行ったようだ。
ルリは自力で脱出を試みるが、どうも力が入らない。
罠には毒が仕掛けられていたようだ。
そうしていると物音が聞こえてきた。
罠をしかけた者だろう。
(ここまでか・・・)
ルリは死を覚悟した。
薄れ行く意識の中人間を確認したところでルリは気を失った。
(ん・・・)
ルリはしばらくすると目を覚ました。
見たことのない場所だった。
(ここは・・・?)
「あ、気がついた?」
同じ部屋にいた人間の女の子が話しかけてくる。
ルリは起き上がろうとした。
しかし思うように身体が動かない。
(痛っ)
「あ、だめだよ、寝てないと」
人間の女の子がよって来る。
ルリは今居る場所を確かめようとあたりを見回していると、
その女の子が話し始めた。
「大丈夫?道端で倒れてたからつい連れてきちゃったんだけど・・・
ちょっと酷い怪我をしていたから手当てしたんだ。
ボクは千歳和。知り合いたちからはカズって呼ばれてるよ、
って君に言ってもしょうがないか」
カズと名乗った少女は一人完結した。
ルリは女の子でしかも『なごみ』という名前なのに、
カズと呼ばれているのが不思議だったが、
相手は人間のため、
当然言葉が通じるわけがないので黙って聞いていた。
「あ、そうだ」
そうしているとカズは何か思いついたようだ。
「君の名前を考えてあげないとね。
ん~どうしようか?」
カズは考えている。
「君の名前は・・・
ん~あんまりひねりすぎるのもどうかと思うから・・・
そうだ、狐だからキーちゃんて呼ぶね」
結局シンプルな名前にすることに決めたようだ。
ルリは単純だな、と思ったが、嫌ではなかった。
ルリは一声ないて肯定を示した。
その時部屋に別の人物が入ってきた。
「カズや」
「はい、あ、おじいちゃん。どうなさいました?」
入って来たのはカズのお祖父さんのようだ。
「この子は?」
「はい、怪我をしていたようなので、拾ってきたのですが・・・」
「ふむ。手当ては・・・済んでおるようじゃな」
「はい、毒が縫ってあったようですが、
本来小動物向けの弱い毒だったようで、
もうその成分は検出されませんでした」
「そうか、それで・・・」
ルリはカズとお祖父さんの話を聞いていたが、
専門的な事を話しているようで、
よくわからなかった。
しばらくすると2人の会話も終わりに近づいてきたようだ。
「それでその子をどうするつもりじゃ?」
「傷が完治するまで家で飼ってあげようと思っているのですが・・・」
「ふむ、そうか、まあよい。ちゃんと面倒を見てやるんじゃぞ」
「はい!」
こうしてルリはしばらくカズの家で過ごすことになった。
・・・
・・・
・・・
ルリの傷はしばらくするとすっかりよくなった。
カズやカズの友達はルリをかわいがってくれて、遊ぶ事も増えた。
ここ数日でルリの人間に対しての見解がかなり変わっていた。
「すっかりよくなったね、もう大丈夫かな?」
カズが聞いてくる。
ルリは肯定を示した。
「そっか、よかった~」
そんなやりとりをしていると、いつもカズと一緒に遊んでる少女が走ってくる。
「はぁはぁ、カズ、キーちゃんここだったんだ・・・」
その少女の様子はいつもと違っていた。
とても急いでいたのか、息が切れている。
「大変なんだ・・・カズ今すぐ家に戻って!おじいさんが・・・」
「え・・・?」
悪い予感がしてカズとルリは家に戻った。
「おじいちゃん・・・?」
家に着くとお祖父さんの顔には白い布がかぶさっていた。
部屋にはカズの両親や親戚の人と思われる人達がいる。
みんな泣いていたり、顔を覆ったりしていて、
空気がとても重い。
「ねえ、お母さん、お祖父ちゃんどうしちゃったの・・・?」
カズが母親に質問する。
母親はお祖父さんが亡くなった事を告げる。
「そんな、お祖父ちゃん・・・お祖父ちゃん・・・!」
カズが泣き出す。
ルリはここ数日カズと過ごしてきて、
カズがお祖父ちゃんの事がとても好きだという事を知っていた。
カズのおかげでカズの家族、カズの友達と出会い、
ルリの人間に対しての見方を変えてくれた人が悲しんでいる。
ルリはカズに恩返しをしたいと思っていた。
今こそ今まで受けた恩義を返すべきだと思ったルリは一人飛び出した。
「キーちゃん?どこに行くの!?」
カズの声が聞こえるが、振り返らない。
ルリは走り続けた。
昔一族に伝わる秘薬で死者を甦らせる薬があったのを思い出したのだ。
ルリはそれを取りに戻った。
薬を見つけルリはすぐに引き返したが、
時間は夜になっていた。
「キーちゃん!?よかった、どこ行ってたの?心配したんだよ?」
カズはそういうとルリが何かをくわえているのに気が付く。
「これは・・・?」
カズが聞いてくる。
ルリはこれをお祖父ちゃんに飲ませるようにジェスチャーした。
「これをおじいちゃんに・・・?うん、わかった、試してみる!」
カズはお祖父さんの口に薬を飲ませた。
そうするとお祖父さんの身体がひかり、あたりは光に包まれた。
「うわっ」
カズはおどろいて目を閉じてしまった。
ルリも同様だ。
しばらくして視界が戻って来ると、
カズはそこに再びルリが居ないことに気が付いた。
「キーちゃん・・・どこに・・・?」
カズはなんとなくこの後ルリとは会えないような予感がしていた。
・・・
・・・
・・・
一方ルリは暗闇に飛ばされていた。
場所を確認しようとすると聞いた事のない声が聞こえてきた。
「まったく何やってくれちゃったのかなぁ」
その敵意まるだしの声にルリは警戒する。
「ああ、警戒しても無駄だよ。
私は君の心に直接語りかけてるからそこの近くにはいないんだ。
ああ、君が人語を理解できるのは知ってるから。
私はなんてったってえっら~~~い神様だからね」
神と呼ばれる存在がいることは聞いた事があったが、
まさか話かけられる事になろうとは思っていなかった。
そしてルリが想像していた神という存在と、
かなり雰囲気が違っていた。
そんなことをお構いなしにその声の主は話を続ける。
「あ、ちなみに一応君の言葉もわかるから。
と言っても君の言う事を聞こうなんて思わないけどね」
その言葉に怒りを覚えたルリだったが、
どうしようもないので無言で聞いている。
「さてそれじゃあ本題。
君、死体を傷つけたね?
知ってるかどうかは知らないけど、
死体を傷つけるのは罪なんだよ?」
ルリは言われた意味がわからなかった。
「わからないみたいな顔をしているね。
ずばり君が持ってきた薬だよ。
あれをあの少女のお祖父さんに飲ませるよう促したでしょ?」
ルリは肯定した。
「あれは死体を傷つけた事になるんだ。
飲ませた本人はもちろん、
薬を与えた君にももちろん責任がある」
ルリがそこで初めて話した。
「カズも罰を受けるの!?」
「会話するつもりはなかったけど、
特別に答えてあげよう。
当然だろ?
彼は薬を飲ませた本人だ。
彼にはかなり重い罰を与えさせてもらったよ」
「そんな・・・あれはワタシが勝手に!」
「そんな事は関係ない。
どんな背景や理由があっても罪は罪」
「じゃあワタシがカズの罪も受ける!」
そういうとその神様は笑い出した。
「そ~んな事はできないんだよねぇ。
罪はやった事に対して与えるもの。
それを肩代わりなんてできるわけがないだろう。
それにさっきも言ったけど、
元々君の意見を聞くつもりもないしね。
さて長話が過ぎたね。
以上の理由から君を裁かせていただくよ。
君の罰は・・・」
・・・
・・・
・・・
竜胆ルリはそこで目を覚ました。
「ルリ?大丈夫かの?」
目を覚ますとそこには、
知り合って随分長い年月を一緒に過ごした人物がいた。
「ずいぶんうなされておったようじゃが、
怖い夢でも見たのかの?」
彼女の名前は卯花之佐久夜姫。
神様と呼ばれる存在だった。
『卯花之佐久夜姫と一緒にいること』
それがあの時ルリに与えられた罰だった。
だがそれは罰と呼べる物なのか疑問だった。
卯花之佐久夜姫は優しく、
一緒にいるとむしろ楽しいくらいだった。
『竜胆ルリ』という名前をつけてくれたのも、
彼女なのだ。
「妾はこれから千歳春樹という者のところへ向かう。
お主はおとなしくしておるのじゃぞ」
「え、でも・・・ルリは・・・」
「嫌じゃろうがあやつの言う事は聞くようにするんじゃぞ。
あやつも一応神で妾の上司なんじゃから」
そう言って、出て行く卯花之佐久夜姫。
それ以上は何も言わず、卯花之佐久夜姫を見送るルリ。
「千歳・・・春樹・・・」
ルリは卯花之佐久夜姫が言っていた人物の名前をつぶやいた。
その名前に妙に聞き覚えがあったからである。
「千歳・・・この名前どこかで・・・」
ルリは思い出そうとするが、出てこない。
「今度あの上司の神様に聞いてみよう」
そう思いルリは考えるのをやめた。
こうして卯花之佐久夜姫は千歳春樹の元を訪る。
数日後卯花之佐久夜姫が何をしに行ったのかを知ったルリも、
卯花之佐久夜姫を追いかけ千歳家を訪れる。
そしてそこでルリはかけがえのない物を手に入れるのだった・・・
Fin
今回からは天神乱漫のSSを公開していきます~
初回の今回は竜胆ルリの過去のお話です。
では本編をどうぞ
(ルリは許されない・・・許されてはいけない・・・)
(カズ・・・ごめんなさい・・・)
・・・
・・・
・・・
(不覚だった・・・こんな罠にひっかかるなんて・・・)
竜胆ルリはねずみとりにひっかかかってしまっていた。
通常こんな罠にかかるルリではない。
しかし、子狐が罠にかかりそうになっていたのを助けたのだ。
あまりに余裕がなかったため身代わりにならざるを得なかったのだ。
助けた子狐は仲間を呼びに行ったようだ。
ルリは自力で脱出を試みるが、どうも力が入らない。
罠には毒が仕掛けられていたようだ。
そうしていると物音が聞こえてきた。
罠をしかけた者だろう。
(ここまでか・・・)
ルリは死を覚悟した。
薄れ行く意識の中人間を確認したところでルリは気を失った。
(ん・・・)
ルリはしばらくすると目を覚ました。
見たことのない場所だった。
(ここは・・・?)
「あ、気がついた?」
同じ部屋にいた人間の女の子が話しかけてくる。
ルリは起き上がろうとした。
しかし思うように身体が動かない。
(痛っ)
「あ、だめだよ、寝てないと」
人間の女の子がよって来る。
ルリは今居る場所を確かめようとあたりを見回していると、
その女の子が話し始めた。
「大丈夫?道端で倒れてたからつい連れてきちゃったんだけど・・・
ちょっと酷い怪我をしていたから手当てしたんだ。
ボクは千歳和。知り合いたちからはカズって呼ばれてるよ、
って君に言ってもしょうがないか」
カズと名乗った少女は一人完結した。
ルリは女の子でしかも『なごみ』という名前なのに、
カズと呼ばれているのが不思議だったが、
相手は人間のため、
当然言葉が通じるわけがないので黙って聞いていた。
「あ、そうだ」
そうしているとカズは何か思いついたようだ。
「君の名前を考えてあげないとね。
ん~どうしようか?」
カズは考えている。
「君の名前は・・・
ん~あんまりひねりすぎるのもどうかと思うから・・・
そうだ、狐だからキーちゃんて呼ぶね」
結局シンプルな名前にすることに決めたようだ。
ルリは単純だな、と思ったが、嫌ではなかった。
ルリは一声ないて肯定を示した。
その時部屋に別の人物が入ってきた。
「カズや」
「はい、あ、おじいちゃん。どうなさいました?」
入って来たのはカズのお祖父さんのようだ。
「この子は?」
「はい、怪我をしていたようなので、拾ってきたのですが・・・」
「ふむ。手当ては・・・済んでおるようじゃな」
「はい、毒が縫ってあったようですが、
本来小動物向けの弱い毒だったようで、
もうその成分は検出されませんでした」
「そうか、それで・・・」
ルリはカズとお祖父さんの話を聞いていたが、
専門的な事を話しているようで、
よくわからなかった。
しばらくすると2人の会話も終わりに近づいてきたようだ。
「それでその子をどうするつもりじゃ?」
「傷が完治するまで家で飼ってあげようと思っているのですが・・・」
「ふむ、そうか、まあよい。ちゃんと面倒を見てやるんじゃぞ」
「はい!」
こうしてルリはしばらくカズの家で過ごすことになった。
・・・
・・・
・・・
ルリの傷はしばらくするとすっかりよくなった。
カズやカズの友達はルリをかわいがってくれて、遊ぶ事も増えた。
ここ数日でルリの人間に対しての見解がかなり変わっていた。
「すっかりよくなったね、もう大丈夫かな?」
カズが聞いてくる。
ルリは肯定を示した。
「そっか、よかった~」
そんなやりとりをしていると、いつもカズと一緒に遊んでる少女が走ってくる。
「はぁはぁ、カズ、キーちゃんここだったんだ・・・」
その少女の様子はいつもと違っていた。
とても急いでいたのか、息が切れている。
「大変なんだ・・・カズ今すぐ家に戻って!おじいさんが・・・」
「え・・・?」
悪い予感がしてカズとルリは家に戻った。
「おじいちゃん・・・?」
家に着くとお祖父さんの顔には白い布がかぶさっていた。
部屋にはカズの両親や親戚の人と思われる人達がいる。
みんな泣いていたり、顔を覆ったりしていて、
空気がとても重い。
「ねえ、お母さん、お祖父ちゃんどうしちゃったの・・・?」
カズが母親に質問する。
母親はお祖父さんが亡くなった事を告げる。
「そんな、お祖父ちゃん・・・お祖父ちゃん・・・!」
カズが泣き出す。
ルリはここ数日カズと過ごしてきて、
カズがお祖父ちゃんの事がとても好きだという事を知っていた。
カズのおかげでカズの家族、カズの友達と出会い、
ルリの人間に対しての見方を変えてくれた人が悲しんでいる。
ルリはカズに恩返しをしたいと思っていた。
今こそ今まで受けた恩義を返すべきだと思ったルリは一人飛び出した。
「キーちゃん?どこに行くの!?」
カズの声が聞こえるが、振り返らない。
ルリは走り続けた。
昔一族に伝わる秘薬で死者を甦らせる薬があったのを思い出したのだ。
ルリはそれを取りに戻った。
薬を見つけルリはすぐに引き返したが、
時間は夜になっていた。
「キーちゃん!?よかった、どこ行ってたの?心配したんだよ?」
カズはそういうとルリが何かをくわえているのに気が付く。
「これは・・・?」
カズが聞いてくる。
ルリはこれをお祖父ちゃんに飲ませるようにジェスチャーした。
「これをおじいちゃんに・・・?うん、わかった、試してみる!」
カズはお祖父さんの口に薬を飲ませた。
そうするとお祖父さんの身体がひかり、あたりは光に包まれた。
「うわっ」
カズはおどろいて目を閉じてしまった。
ルリも同様だ。
しばらくして視界が戻って来ると、
カズはそこに再びルリが居ないことに気が付いた。
「キーちゃん・・・どこに・・・?」
カズはなんとなくこの後ルリとは会えないような予感がしていた。
・・・
・・・
・・・
一方ルリは暗闇に飛ばされていた。
場所を確認しようとすると聞いた事のない声が聞こえてきた。
「まったく何やってくれちゃったのかなぁ」
その敵意まるだしの声にルリは警戒する。
「ああ、警戒しても無駄だよ。
私は君の心に直接語りかけてるからそこの近くにはいないんだ。
ああ、君が人語を理解できるのは知ってるから。
私はなんてったってえっら~~~い神様だからね」
神と呼ばれる存在がいることは聞いた事があったが、
まさか話かけられる事になろうとは思っていなかった。
そしてルリが想像していた神という存在と、
かなり雰囲気が違っていた。
そんなことをお構いなしにその声の主は話を続ける。
「あ、ちなみに一応君の言葉もわかるから。
と言っても君の言う事を聞こうなんて思わないけどね」
その言葉に怒りを覚えたルリだったが、
どうしようもないので無言で聞いている。
「さてそれじゃあ本題。
君、死体を傷つけたね?
知ってるかどうかは知らないけど、
死体を傷つけるのは罪なんだよ?」
ルリは言われた意味がわからなかった。
「わからないみたいな顔をしているね。
ずばり君が持ってきた薬だよ。
あれをあの少女のお祖父さんに飲ませるよう促したでしょ?」
ルリは肯定した。
「あれは死体を傷つけた事になるんだ。
飲ませた本人はもちろん、
薬を与えた君にももちろん責任がある」
ルリがそこで初めて話した。
「カズも罰を受けるの!?」
「会話するつもりはなかったけど、
特別に答えてあげよう。
当然だろ?
彼は薬を飲ませた本人だ。
彼にはかなり重い罰を与えさせてもらったよ」
「そんな・・・あれはワタシが勝手に!」
「そんな事は関係ない。
どんな背景や理由があっても罪は罪」
「じゃあワタシがカズの罪も受ける!」
そういうとその神様は笑い出した。
「そ~んな事はできないんだよねぇ。
罪はやった事に対して与えるもの。
それを肩代わりなんてできるわけがないだろう。
それにさっきも言ったけど、
元々君の意見を聞くつもりもないしね。
さて長話が過ぎたね。
以上の理由から君を裁かせていただくよ。
君の罰は・・・」
・・・
・・・
・・・
竜胆ルリはそこで目を覚ました。
「ルリ?大丈夫かの?」
目を覚ますとそこには、
知り合って随分長い年月を一緒に過ごした人物がいた。
「ずいぶんうなされておったようじゃが、
怖い夢でも見たのかの?」
彼女の名前は卯花之佐久夜姫。
神様と呼ばれる存在だった。
『卯花之佐久夜姫と一緒にいること』
それがあの時ルリに与えられた罰だった。
だがそれは罰と呼べる物なのか疑問だった。
卯花之佐久夜姫は優しく、
一緒にいるとむしろ楽しいくらいだった。
『竜胆ルリ』という名前をつけてくれたのも、
彼女なのだ。
「妾はこれから千歳春樹という者のところへ向かう。
お主はおとなしくしておるのじゃぞ」
「え、でも・・・ルリは・・・」
「嫌じゃろうがあやつの言う事は聞くようにするんじゃぞ。
あやつも一応神で妾の上司なんじゃから」
そう言って、出て行く卯花之佐久夜姫。
それ以上は何も言わず、卯花之佐久夜姫を見送るルリ。
「千歳・・・春樹・・・」
ルリは卯花之佐久夜姫が言っていた人物の名前をつぶやいた。
その名前に妙に聞き覚えがあったからである。
「千歳・・・この名前どこかで・・・」
ルリは思い出そうとするが、出てこない。
「今度あの上司の神様に聞いてみよう」
そう思いルリは考えるのをやめた。
こうして卯花之佐久夜姫は千歳春樹の元を訪る。
数日後卯花之佐久夜姫が何をしに行ったのかを知ったルリも、
卯花之佐久夜姫を追いかけ千歳家を訪れる。
そしてそこでルリはかけがえのない物を手に入れるのだった・・・
Fin