【復刻SS】探偵オペラミルキィ・アリア後編
- 2017/01/07
- 23:59
後編です~
この世界に来てから2日が経過した。
しかしまだ元の世界に帰る方法は見つかっていなかった。
アリアはこの世界にいる間はシャーロック・シェリンフォードとして生活することになった。
いつ誰がどこで聞き耳を立てているかわからないため、
事情を知っている人間も呼び方は統一することにした。
このような事態を多くの人間に知られるわけにはいかないからである。
日に日に募る苛立ちと不安。
(あたし・・・もう帰れないのかな・・・)
そんな事を考えているとネロ達が話しかけてきた。
「お~いシャロ、町に出かけないか?」
「デパ地下の試食コーナーはそれはもうすばらしいところですわよ」
「・・・今日はおせち料理の売れ残りがあるかも・・・」
こう悩んでいても仕方ない。
アリアは彼女達の提案に乗った。
「「「おお~」」」
デパートの地下を訪れたネロ達一行は目を輝かせた。
そこには予想通りおせちの試食コーナーがあった。
ネロたちは早速試食を始めた。
「ん~やっぱり3が日のうち、せめて1日くらいはおせちを食べないとな~」
「日本の正月はやっぱりおせちですわよね~」
3人は少しずついろいろな食材を食べていく。
その姿に唖然としているとエルが話しかけてきた。
「あの・・・シャロさんは食べないのですか・・・?」
「え~と・・・あたしあまりおなか減ってないから・・・」
貴族がこんなはしたないマネなんかできない。
アリアはそう思っていたが体は正直だった。
お腹の虫が鳴き始めた。
アリアは真っ赤になってお腹を押さえる。
そんなアリアにネロが小声で話しかけてきた。
「今はシャロなんですから、違和感がないほうがいいですよ」
ネロを見るとネロは片目でウインクする。
アリアは自分はシャロであることを疑われないためにやるんだと、
自分に言い訳しつつ試食した。
「キンジさん、キンジさん!やりました!」
アリアが朝からテンションが高い。
しかも自分の呼び方が変だ。
そうだ、今のアリアはアリアじゃなくてシャロって子がのりうつっているん
だった。
そんな事を寝ぼけた頭で思い出しながらキンジは時計を見る。
時刻は午前7時前。
正月くらいもう少し寝ていたいものだ。
だがいきなり知らない世界に連れてこられた子を邪険にするわけにもいか
ず、キンジは起きる事にした。
「おはよう、アリア。
どうしたんだ?」
「おはようございますっ!
実は初夢を見たんですよ」
「おお~どんな夢だったんだ?」
「え~とですね。
にたかっていう農家の方が一人の行き倒れたお侍さんにご馳走するっていう
夢でした。カレンダーが8月31日を示していたので季節は夏です!」
「・・・それのどこが嬉しいんだ?」
「あれキンジさん知らないんですか?
いちぶし、にたか、さんなつびってことわざ。
これらが初夢に出てくるとその一年は幸運になれるらしいですよ。
しかもいっぺんに全てを見れるなんて、今年は絶対ついてます!」
「それを言うなら、
1富士、2鷹、3なすびだろ・・・」
「え?」
「・・・」
「で、でもにたかは合ってますよ!」
「それも意味が違う。
にたかさんっていう人じゃなくて、
鳥の鷹を指してる」
「・・・」
「・・・」
「・・・そ、そんなぁ」
「まあ、所詮夢なんだからそう気にするなよ」
「・・・はい・・・」
「それじゃあ着替えるからリビングで待っててくれ」
「わかりました~」
そういうとシャロは部屋から出て行った。
さらに言うと今日は1月3日。
初夢は昨日なわけだが、これ以上突っ込むと更に落ち込んでしまうと思い、
キンジは言うのをやめたのだった。
リビングに行くとチームバスカービルの面子が既に揃っていた。
アリアにこのような現象が起きたのは何かしらの陰謀の可能性が高い。
呼び方も念のため、元の名前で呼ぶことにした。
さらにしばらくはチームメンバー全員で過ごす事にした。
敷地一体には白雪が結界を張ってくれている。
「あ、キンちゃんおはよう。
もう少しでお雑煮できるからね」
既にテーブルにはおせち料理が並んでいる。
昨日、一昨日と食べたがその味は絶品だった。
シャロはそのおいしさに感動し涙を流したほどだ。
そんな事を思い出しているとお雑煮ができたようだ。
白雪がお盆に乗せて運んでくる。
理子とシャロのはおしるこのようだ。
「白雪ありがとうな。
寮に住んでるのにこんな豪華なおせち料理が食べれるとは思ってなかった。
星伽の皆さんにも感謝してると伝えておいてくれ」
「うん。
本当は私が自分で料理したかったのだけど、
まだうまく作れる自身がなくて」
このおせちは全て白雪が用意したもの。
星伽家のお抱えのシェフが作ったようだ。
「さあ、お雑煮が冷めちゃう前にいただきましょう」
「そうだな」
俺達は三日目のおせち料理をいただくことにした。
三日間食べてきたがこのおせち料理の味はやはり絶品だった。
シャロは今日も感動で泣きながら白雪にお礼を言っている。
アリアが白雪に涙ながらにお礼を言っている姿は今後見る事はできないだろ
う。
俺もこの料理が今日までだと思うと名残惜しいが、正月も今日までだし、
これ以上続くと元の食生活に戻る事ができなくなりそうだったので、
白雪のキンちゃんが望むんだったらまだ頼めるけど・・・という誘いを断っ
たのだった。
それ以外にも白雪には今回の現象の原因を調べてもらっている。
今日あたり進展があるといいんだが・・・
そう思っていると白雪がみんなを集めた。
時刻は夕方の4時を回っていた。
「これみたい・・・」
白雪の前にはノートパソコンの画面が開かれていた。
「1が揃う時、世界と世界は繋がる?」
「うん。
多分これに間違いないよ。
ここに条件とどういった呪いか説明が書かれてるよ」
俺はその説明に目を通す。
そこにはこう書かれていた。
この呪術は1月1日1時1分1秒にしか成功しない。
同じ立場の人間同士じゃないと成功しない。
双方どちらの世界にも超能力が存在しないといけない。
このような条件だった。
さらにこの呪術が使えるのは相当の超能力者って事らしい。
更にこの呪術を使うと著しく体力や精神力を削る。
この条件に合う世界など殆どなく、
このデメリットを承知で使う者なんていなかった。
しかし成功すれば72時間以内に呪いを解かないと永久に元には戻れない。
という事のようだ。
「わたしたちの世界は条件に一致しますね・・・」
「ええ、奇跡的と言っていいと思う」
「原因はわかった。
でも誰が何のためにこんな事を・・・」
「それなんだけど多分アリアに恨みを持ってる人だと思う」
「まあそうだろうな」
「恐らくシャロちゃんとアリアが入れ替わっている間に抹殺しようと企んで
くると思う」
「ま、抹殺!?」
シャロは物騒な言葉に驚く。
「ええ。
この世界だとそういう事が起きるの・・・
だから用心して今はみんな一緒に過ごすようにしてるの・・・」
「皆さん本当に大変な世界で過ごされてるんですね・・・:
「生まれながらにして過ごしてるからもう慣れてるけどな」
「この辺りにはわたしが結界を張ってるから今のところは大丈夫だけど、
相手が回復したらわからないね・・・
恐らくわたしと同じかそれ以上の超能力の使い手だろうから・・・」
「それまでになんとか対策を考えないとな・・・」
「ううん、キンちゃん。
もうアリアを元に戻す方法はわかってるよ」
全員が白雪に注目する。
「呪いなんだから呪いを解けばいいんだよ」
あまりにあっさりとした答えに俺達は絶句する。
「あ、でもねひとつだけ問題があるんだ」
「問題?」
「うん。
申し訳ないんだけど、わたしが呪いを解いている間は結界が弱くなっちゃう
の。
多分敵はそこを突いてくると思う。
その間シャロちゃんをみんなで守ってもらえるかな」
「わかった。
相手が超能力者という事はジャンヌにも来てもらった方がいいな」
俺はジャンヌに連絡を取り事情を説明し来てもらった。
俺達は襲撃にそなえ、外に移動した。
俺達がアリアを守る体制になったのを確認すると白雪が始める事を告げた。
「それじゃあ、始めるね」
俺達は身構える。
その瞬間声が響いた。
「呪いは解かせないわよっ!」
声が聞こえたと思ったら強風が吹き荒れた。
試食を終えアリアが学院に戻ると、
アリアはアンリエットに呼び出された。
原因がわかったのだという。
早速アンリエットのいる生徒会室を訪れた。
「原因がわかったって?」
「ええ」
「それでその原因って・・・」
「恐らくこれかと・・・」
アンリエットは古い書物を見せてきた。
早速目を通すアリア。
「・・・呪い?」
「はい。
まずこれに間違いないかと。
ですが・・・」
アンリエットが言いよどむ。
「原因はわかったけど、
あたしたちにできることはない・・・」
書物には呪いの詳細が書かれていた。
しかしその呪いを解くには、
呪いをかけた人物がいる世界の人間にしか不可能だという事が記されてい
た。
「力になれなくて申し訳ありません・・・」
「いいわ、あんた達のせいじゃないもの。
むしろあたしの世界に連れて行かれちゃったシャロって子の方がかわいそう
よ。
それにあたしには仲間がいる。
きっとなんとかしてくれるわ」
そういった瞬間頭の中に聞き覚えのある声が響いてきた。
(アリア・・・アリア・・・聞こえる!?
聞こえたら返事して!)
白雪の声だった。
アリアは辺りを見回す。
しかし白雪の姿は見あたらなかった。
「白雪!?
あんたどこにいるの!?」
(アリア!?
よかった、聞こえるのね。
今、呪いを解いてる最中で、
脳に直接話しかけてるの。
目を閉じてくれればわたしが見えるはずだよ)
アリアは目を閉じた。
そこには確かに白雪が見えた。
アンリエットは目の前のシャロの行動から何が起こっているのか察した。
さらに目の前のシャロの体が光っている。
「アリアさん、もしや!?」
「ええ、仲間たちが今呪いを解いてくれてるみたい!」
「!本当ですか!」
「ええ、だから急だけどそろそろお別れみたい。
短い間だったけど世話になったわね」
「いいえ。
さすがホームズの子孫が選んだ仲間ですね。
それでは、お元気で」
「ええ。
あの子達にもよろしく言っておいて」
「わかりました」
そう言うと目の前のシャロの光は消え、シャロは崩れ落ちた。
アンリエットはその身体を受け止める。
(さようなら、アリアさん)
強風の中から現れたのは巫女姿の少女だった。
しかしその巫女服は黒く、普通の巫女とは思えなかった。
歳は見た感じキンジ達と同い年くらいだ。
格好からも判断できたが殺気も本物だった。
そこからキンジはこの子が今回の事件の首謀者なのだという事を確信した。
「チームバスカービル。
この呪いを解く方法を見つけるとは・・・
さすが星伽の巫女を抱えるチームなだけあるわね。
でも呪いは解かせない!」
少女はそういうなり、
日本刀を抜きアリアに襲い掛かった。
しかも身体の回りには業風が吹き荒れていて、
防御の役目を果たしている。
「ジャンヌ!」
「言われずとも!」
目には目をというわけで超能力者には超能力者が勝負する。
ジャンヌが少女と接触した。
刀と刀がぶつかり合う。
しかし・・・
「フ、ジャンヌ・ダルクか。
元イ・ウーの下っ端ごときがあたしに敵うとでも思っているのか?」
少女は剣に風の力を宿しジャンヌを力ずくで吹き飛ばした。
だがそこに隙ができた。
風のバリアを解いたのである。
その隙をレキは見逃さなかった。
レキは少女を狙撃する。
「うあ!」
足を打たれた少女は悲鳴をあげ、崩れ落ちる。
しかし風の力で再びバリアを作り鉄壁を誇る。
「レキ・・・よくも・・・やってくれたな・・・
今すぐにでも殺してやりたいが今は任務中だ。
まずは任務を遂行する・・・!」
そう言うと全身に竜巻をまとい白雪に襲いかかる・・・!
「フフフ・・・
あたしの狙いは神崎アリアではない・・・!
この呪術を使えば、
呪いを解くために星伽の巫女が無防備になるのはわかっていた!
このチームで最もやっかいなのは強力な超能力者である星伽の巫女だから
な。
さらに星伽の巫女さえ片付けられればこの呪いを解ける者はいなくなる。
まさに一石二鳥!このチャンス、絶対に見逃さない!」
黒巫女の狙いはまさにこれ。
キンジ達がこの呪いの解き方を知るという事を予測し、
そのために強力な超能力者の白雪に頼む事まで計算していたのだ。
解決策が見つからなければアリアはそのまま別人になる。
呪いを解こうとすれば相当の超能力者が無防備になる。
どう転んでも誰かしらに隙ができるということだ。
ジャンヌは先ほどの竜巻で遠くに飛ばされてしまい戻ってこれない!
竜巻を身にまといものすごいスピードで突っ込んでくる黒巫女。
「死ねぇ!」
駄目だ・・・
そう思った瞬間だった。
竜巻に雷が落ちた。
そこにいた全員がこの現象に驚く。
その威力はとてつもない威力だった。
雷を浴びた黒巫女は、地面にうちふせらた。
「ばかな・・・これはどういうわけだ・・・
この中に超能力を使える者はジャンヌ以外にいないはず・・・
ジャンヌごときがこんな雷を操れるわけがない・・・
いったいこれは・・・」
俺達はアリアを見る。
そこには両手を前にしているアリアがいた。
「まさか・・・アリアが・・・?」
キンジがつぶやいた瞬間聞き覚えのある声が響いた。
「呪い解き終わりました!」
白雪が目を覚ましたのだ。
それと同時にアリアもいつもの口調に戻る。
「さあ、犯人を捕まえるわよ!」
「白雪!アリア!」
二人の復活に喜ぶ面々。
そして黒巫女を見た。
しかし、黒巫女の身体は既に黒い霧が包んでいた。
その霧が晴れるとちぎれた白い人型の紙だけが残されていた。
「これはいったい・・・」
「恐らく式神ですね・・・」
「あのとんでもない魔力を持っていたのが式神だと・・・?」
一度だけとはいえ剣を交えたジャンヌが驚愕する。
「・・・やっぱり俺達の敵は只者じゃないやつらって事だな」
キンジは改めて敵の強大さを思い知った。
少女は血だらけの格好で屋敷の中をふらつきながら歩いていた。
式神を破られた反動は大きかった。
歩くのが限界の状況だ。
そんな彼女が向かう先は医務室である。
「おのれ・・・バスカービル・・・」
そうつぶやくと忌々しい声が聞こえてきた。
「あれぇ、どうしたの~大怪我じゃない~
もしかして式神がに倒されちゃったからかな~?」
声は事情を知ってる上でわざと言っている事を知らしめてくる。
「うるさい・・・貴様から先に潰してやろうか・・・」
名目上一応仲間という立場の存在だが鬱陶しいことこの上ない。
「アハハ無理しちゃって。
しかし随分リスクを背負った計画のわりに結果は散々なんて、
今年の正月のどの番組のお笑い芸人より面白かったよ♪」
これ以上相手にするのも面倒なので少女は口をつぐむ。
「まあ、みんな君なんて期待してなかったし、
君の仇討ちはちゃんと組織がしてくれるから安心しなよ」
そういうと声の主は消えていった。
「おのれ・・・次こそは必ず・・・!」
少女は復習を胸に誓ったのだった。
こうしてそれぞれ二人は元の世界に戻れた。
シャロは戻る時に確かにトイズが使えていたが、
戻った後はやはり使えなくなっていた。
やはり何かしらのきっかけがないと駄目らしい。
今回使えたのは偶然なのだろう。
しかし数日間とはいえ一緒に過ごした人を失いたくない、
というシャロの強い思いが奇跡を起こさせたのかもしれない。
こうして今回の騒動は幕を下ろした。
だがこれで終わったわけではない。
正月すら関係なく襲ってくる“敵”
キンジ達に休息の日が訪れるのであろうか。
休息の日が訪れるまでキンジ達は戦い続けるのである。
終わり
いかがだったでしょうか。
ミルキィはアニメの1期を見てから書いたのでこんな感じでした。
楽しんでいただけたら幸いです。
それでは~
この世界に来てから2日が経過した。
しかしまだ元の世界に帰る方法は見つかっていなかった。
アリアはこの世界にいる間はシャーロック・シェリンフォードとして生活することになった。
いつ誰がどこで聞き耳を立てているかわからないため、
事情を知っている人間も呼び方は統一することにした。
このような事態を多くの人間に知られるわけにはいかないからである。
日に日に募る苛立ちと不安。
(あたし・・・もう帰れないのかな・・・)
そんな事を考えているとネロ達が話しかけてきた。
「お~いシャロ、町に出かけないか?」
「デパ地下の試食コーナーはそれはもうすばらしいところですわよ」
「・・・今日はおせち料理の売れ残りがあるかも・・・」
こう悩んでいても仕方ない。
アリアは彼女達の提案に乗った。
「「「おお~」」」
デパートの地下を訪れたネロ達一行は目を輝かせた。
そこには予想通りおせちの試食コーナーがあった。
ネロたちは早速試食を始めた。
「ん~やっぱり3が日のうち、せめて1日くらいはおせちを食べないとな~」
「日本の正月はやっぱりおせちですわよね~」
3人は少しずついろいろな食材を食べていく。
その姿に唖然としているとエルが話しかけてきた。
「あの・・・シャロさんは食べないのですか・・・?」
「え~と・・・あたしあまりおなか減ってないから・・・」
貴族がこんなはしたないマネなんかできない。
アリアはそう思っていたが体は正直だった。
お腹の虫が鳴き始めた。
アリアは真っ赤になってお腹を押さえる。
そんなアリアにネロが小声で話しかけてきた。
「今はシャロなんですから、違和感がないほうがいいですよ」
ネロを見るとネロは片目でウインクする。
アリアは自分はシャロであることを疑われないためにやるんだと、
自分に言い訳しつつ試食した。
「キンジさん、キンジさん!やりました!」
アリアが朝からテンションが高い。
しかも自分の呼び方が変だ。
そうだ、今のアリアはアリアじゃなくてシャロって子がのりうつっているん
だった。
そんな事を寝ぼけた頭で思い出しながらキンジは時計を見る。
時刻は午前7時前。
正月くらいもう少し寝ていたいものだ。
だがいきなり知らない世界に連れてこられた子を邪険にするわけにもいか
ず、キンジは起きる事にした。
「おはよう、アリア。
どうしたんだ?」
「おはようございますっ!
実は初夢を見たんですよ」
「おお~どんな夢だったんだ?」
「え~とですね。
にたかっていう農家の方が一人の行き倒れたお侍さんにご馳走するっていう
夢でした。カレンダーが8月31日を示していたので季節は夏です!」
「・・・それのどこが嬉しいんだ?」
「あれキンジさん知らないんですか?
いちぶし、にたか、さんなつびってことわざ。
これらが初夢に出てくるとその一年は幸運になれるらしいですよ。
しかもいっぺんに全てを見れるなんて、今年は絶対ついてます!」
「それを言うなら、
1富士、2鷹、3なすびだろ・・・」
「え?」
「・・・」
「で、でもにたかは合ってますよ!」
「それも意味が違う。
にたかさんっていう人じゃなくて、
鳥の鷹を指してる」
「・・・」
「・・・」
「・・・そ、そんなぁ」
「まあ、所詮夢なんだからそう気にするなよ」
「・・・はい・・・」
「それじゃあ着替えるからリビングで待っててくれ」
「わかりました~」
そういうとシャロは部屋から出て行った。
さらに言うと今日は1月3日。
初夢は昨日なわけだが、これ以上突っ込むと更に落ち込んでしまうと思い、
キンジは言うのをやめたのだった。
リビングに行くとチームバスカービルの面子が既に揃っていた。
アリアにこのような現象が起きたのは何かしらの陰謀の可能性が高い。
呼び方も念のため、元の名前で呼ぶことにした。
さらにしばらくはチームメンバー全員で過ごす事にした。
敷地一体には白雪が結界を張ってくれている。
「あ、キンちゃんおはよう。
もう少しでお雑煮できるからね」
既にテーブルにはおせち料理が並んでいる。
昨日、一昨日と食べたがその味は絶品だった。
シャロはそのおいしさに感動し涙を流したほどだ。
そんな事を思い出しているとお雑煮ができたようだ。
白雪がお盆に乗せて運んでくる。
理子とシャロのはおしるこのようだ。
「白雪ありがとうな。
寮に住んでるのにこんな豪華なおせち料理が食べれるとは思ってなかった。
星伽の皆さんにも感謝してると伝えておいてくれ」
「うん。
本当は私が自分で料理したかったのだけど、
まだうまく作れる自身がなくて」
このおせちは全て白雪が用意したもの。
星伽家のお抱えのシェフが作ったようだ。
「さあ、お雑煮が冷めちゃう前にいただきましょう」
「そうだな」
俺達は三日目のおせち料理をいただくことにした。
三日間食べてきたがこのおせち料理の味はやはり絶品だった。
シャロは今日も感動で泣きながら白雪にお礼を言っている。
アリアが白雪に涙ながらにお礼を言っている姿は今後見る事はできないだろ
う。
俺もこの料理が今日までだと思うと名残惜しいが、正月も今日までだし、
これ以上続くと元の食生活に戻る事ができなくなりそうだったので、
白雪のキンちゃんが望むんだったらまだ頼めるけど・・・という誘いを断っ
たのだった。
それ以外にも白雪には今回の現象の原因を調べてもらっている。
今日あたり進展があるといいんだが・・・
そう思っていると白雪がみんなを集めた。
時刻は夕方の4時を回っていた。
「これみたい・・・」
白雪の前にはノートパソコンの画面が開かれていた。
「1が揃う時、世界と世界は繋がる?」
「うん。
多分これに間違いないよ。
ここに条件とどういった呪いか説明が書かれてるよ」
俺はその説明に目を通す。
そこにはこう書かれていた。
この呪術は1月1日1時1分1秒にしか成功しない。
同じ立場の人間同士じゃないと成功しない。
双方どちらの世界にも超能力が存在しないといけない。
このような条件だった。
さらにこの呪術が使えるのは相当の超能力者って事らしい。
更にこの呪術を使うと著しく体力や精神力を削る。
この条件に合う世界など殆どなく、
このデメリットを承知で使う者なんていなかった。
しかし成功すれば72時間以内に呪いを解かないと永久に元には戻れない。
という事のようだ。
「わたしたちの世界は条件に一致しますね・・・」
「ええ、奇跡的と言っていいと思う」
「原因はわかった。
でも誰が何のためにこんな事を・・・」
「それなんだけど多分アリアに恨みを持ってる人だと思う」
「まあそうだろうな」
「恐らくシャロちゃんとアリアが入れ替わっている間に抹殺しようと企んで
くると思う」
「ま、抹殺!?」
シャロは物騒な言葉に驚く。
「ええ。
この世界だとそういう事が起きるの・・・
だから用心して今はみんな一緒に過ごすようにしてるの・・・」
「皆さん本当に大変な世界で過ごされてるんですね・・・:
「生まれながらにして過ごしてるからもう慣れてるけどな」
「この辺りにはわたしが結界を張ってるから今のところは大丈夫だけど、
相手が回復したらわからないね・・・
恐らくわたしと同じかそれ以上の超能力の使い手だろうから・・・」
「それまでになんとか対策を考えないとな・・・」
「ううん、キンちゃん。
もうアリアを元に戻す方法はわかってるよ」
全員が白雪に注目する。
「呪いなんだから呪いを解けばいいんだよ」
あまりにあっさりとした答えに俺達は絶句する。
「あ、でもねひとつだけ問題があるんだ」
「問題?」
「うん。
申し訳ないんだけど、わたしが呪いを解いている間は結界が弱くなっちゃう
の。
多分敵はそこを突いてくると思う。
その間シャロちゃんをみんなで守ってもらえるかな」
「わかった。
相手が超能力者という事はジャンヌにも来てもらった方がいいな」
俺はジャンヌに連絡を取り事情を説明し来てもらった。
俺達は襲撃にそなえ、外に移動した。
俺達がアリアを守る体制になったのを確認すると白雪が始める事を告げた。
「それじゃあ、始めるね」
俺達は身構える。
その瞬間声が響いた。
「呪いは解かせないわよっ!」
声が聞こえたと思ったら強風が吹き荒れた。
試食を終えアリアが学院に戻ると、
アリアはアンリエットに呼び出された。
原因がわかったのだという。
早速アンリエットのいる生徒会室を訪れた。
「原因がわかったって?」
「ええ」
「それでその原因って・・・」
「恐らくこれかと・・・」
アンリエットは古い書物を見せてきた。
早速目を通すアリア。
「・・・呪い?」
「はい。
まずこれに間違いないかと。
ですが・・・」
アンリエットが言いよどむ。
「原因はわかったけど、
あたしたちにできることはない・・・」
書物には呪いの詳細が書かれていた。
しかしその呪いを解くには、
呪いをかけた人物がいる世界の人間にしか不可能だという事が記されてい
た。
「力になれなくて申し訳ありません・・・」
「いいわ、あんた達のせいじゃないもの。
むしろあたしの世界に連れて行かれちゃったシャロって子の方がかわいそう
よ。
それにあたしには仲間がいる。
きっとなんとかしてくれるわ」
そういった瞬間頭の中に聞き覚えのある声が響いてきた。
(アリア・・・アリア・・・聞こえる!?
聞こえたら返事して!)
白雪の声だった。
アリアは辺りを見回す。
しかし白雪の姿は見あたらなかった。
「白雪!?
あんたどこにいるの!?」
(アリア!?
よかった、聞こえるのね。
今、呪いを解いてる最中で、
脳に直接話しかけてるの。
目を閉じてくれればわたしが見えるはずだよ)
アリアは目を閉じた。
そこには確かに白雪が見えた。
アンリエットは目の前のシャロの行動から何が起こっているのか察した。
さらに目の前のシャロの体が光っている。
「アリアさん、もしや!?」
「ええ、仲間たちが今呪いを解いてくれてるみたい!」
「!本当ですか!」
「ええ、だから急だけどそろそろお別れみたい。
短い間だったけど世話になったわね」
「いいえ。
さすがホームズの子孫が選んだ仲間ですね。
それでは、お元気で」
「ええ。
あの子達にもよろしく言っておいて」
「わかりました」
そう言うと目の前のシャロの光は消え、シャロは崩れ落ちた。
アンリエットはその身体を受け止める。
(さようなら、アリアさん)
強風の中から現れたのは巫女姿の少女だった。
しかしその巫女服は黒く、普通の巫女とは思えなかった。
歳は見た感じキンジ達と同い年くらいだ。
格好からも判断できたが殺気も本物だった。
そこからキンジはこの子が今回の事件の首謀者なのだという事を確信した。
「チームバスカービル。
この呪いを解く方法を見つけるとは・・・
さすが星伽の巫女を抱えるチームなだけあるわね。
でも呪いは解かせない!」
少女はそういうなり、
日本刀を抜きアリアに襲い掛かった。
しかも身体の回りには業風が吹き荒れていて、
防御の役目を果たしている。
「ジャンヌ!」
「言われずとも!」
目には目をというわけで超能力者には超能力者が勝負する。
ジャンヌが少女と接触した。
刀と刀がぶつかり合う。
しかし・・・
「フ、ジャンヌ・ダルクか。
元イ・ウーの下っ端ごときがあたしに敵うとでも思っているのか?」
少女は剣に風の力を宿しジャンヌを力ずくで吹き飛ばした。
だがそこに隙ができた。
風のバリアを解いたのである。
その隙をレキは見逃さなかった。
レキは少女を狙撃する。
「うあ!」
足を打たれた少女は悲鳴をあげ、崩れ落ちる。
しかし風の力で再びバリアを作り鉄壁を誇る。
「レキ・・・よくも・・・やってくれたな・・・
今すぐにでも殺してやりたいが今は任務中だ。
まずは任務を遂行する・・・!」
そう言うと全身に竜巻をまとい白雪に襲いかかる・・・!
「フフフ・・・
あたしの狙いは神崎アリアではない・・・!
この呪術を使えば、
呪いを解くために星伽の巫女が無防備になるのはわかっていた!
このチームで最もやっかいなのは強力な超能力者である星伽の巫女だから
な。
さらに星伽の巫女さえ片付けられればこの呪いを解ける者はいなくなる。
まさに一石二鳥!このチャンス、絶対に見逃さない!」
黒巫女の狙いはまさにこれ。
キンジ達がこの呪いの解き方を知るという事を予測し、
そのために強力な超能力者の白雪に頼む事まで計算していたのだ。
解決策が見つからなければアリアはそのまま別人になる。
呪いを解こうとすれば相当の超能力者が無防備になる。
どう転んでも誰かしらに隙ができるということだ。
ジャンヌは先ほどの竜巻で遠くに飛ばされてしまい戻ってこれない!
竜巻を身にまといものすごいスピードで突っ込んでくる黒巫女。
「死ねぇ!」
駄目だ・・・
そう思った瞬間だった。
竜巻に雷が落ちた。
そこにいた全員がこの現象に驚く。
その威力はとてつもない威力だった。
雷を浴びた黒巫女は、地面にうちふせらた。
「ばかな・・・これはどういうわけだ・・・
この中に超能力を使える者はジャンヌ以外にいないはず・・・
ジャンヌごときがこんな雷を操れるわけがない・・・
いったいこれは・・・」
俺達はアリアを見る。
そこには両手を前にしているアリアがいた。
「まさか・・・アリアが・・・?」
キンジがつぶやいた瞬間聞き覚えのある声が響いた。
「呪い解き終わりました!」
白雪が目を覚ましたのだ。
それと同時にアリアもいつもの口調に戻る。
「さあ、犯人を捕まえるわよ!」
「白雪!アリア!」
二人の復活に喜ぶ面々。
そして黒巫女を見た。
しかし、黒巫女の身体は既に黒い霧が包んでいた。
その霧が晴れるとちぎれた白い人型の紙だけが残されていた。
「これはいったい・・・」
「恐らく式神ですね・・・」
「あのとんでもない魔力を持っていたのが式神だと・・・?」
一度だけとはいえ剣を交えたジャンヌが驚愕する。
「・・・やっぱり俺達の敵は只者じゃないやつらって事だな」
キンジは改めて敵の強大さを思い知った。
少女は血だらけの格好で屋敷の中をふらつきながら歩いていた。
式神を破られた反動は大きかった。
歩くのが限界の状況だ。
そんな彼女が向かう先は医務室である。
「おのれ・・・バスカービル・・・」
そうつぶやくと忌々しい声が聞こえてきた。
「あれぇ、どうしたの~大怪我じゃない~
もしかして式神がに倒されちゃったからかな~?」
声は事情を知ってる上でわざと言っている事を知らしめてくる。
「うるさい・・・貴様から先に潰してやろうか・・・」
名目上一応仲間という立場の存在だが鬱陶しいことこの上ない。
「アハハ無理しちゃって。
しかし随分リスクを背負った計画のわりに結果は散々なんて、
今年の正月のどの番組のお笑い芸人より面白かったよ♪」
これ以上相手にするのも面倒なので少女は口をつぐむ。
「まあ、みんな君なんて期待してなかったし、
君の仇討ちはちゃんと組織がしてくれるから安心しなよ」
そういうと声の主は消えていった。
「おのれ・・・次こそは必ず・・・!」
少女は復習を胸に誓ったのだった。
こうしてそれぞれ二人は元の世界に戻れた。
シャロは戻る時に確かにトイズが使えていたが、
戻った後はやはり使えなくなっていた。
やはり何かしらのきっかけがないと駄目らしい。
今回使えたのは偶然なのだろう。
しかし数日間とはいえ一緒に過ごした人を失いたくない、
というシャロの強い思いが奇跡を起こさせたのかもしれない。
こうして今回の騒動は幕を下ろした。
だがこれで終わったわけではない。
正月すら関係なく襲ってくる“敵”
キンジ達に休息の日が訪れるのであろうか。
休息の日が訪れるまでキンジ達は戦い続けるのである。
終わり
いかがだったでしょうか。
ミルキィはアニメの1期を見てから書いたのでこんな感じでした。
楽しんでいただけたら幸いです。
それでは~